近視抑制治療
近視抑制治療
近視とは眼に入る光線が網膜の手前で結像する状態です。裸眼の場合、近くは見えますが、遠くは焦点が合わずぼやけて見えます。正常な方の目の奥行きの長さ(眼軸長)は23~24ミリですが、近視の方は伸びていることが多いです。
近視の治療法として、現時点で安全性と有効性がデータによって実証されている治療法はわずかです。
当院では低濃度アトロピン点眼(マイオピン)やコンタクトレンズ(オルソケラトロジー)による近視抑制治療を行っております。効果によっては併用療法も行っております。詳しくは担当医へご相談ください。
*自由(保険外)診療となります
コンタクトレンズによる近視進行抑制の効果が知られている物にオルソケラトロジーと焦点深度拡張型コンタクトレンズがあります。
オルソケラトロジーは就寝前に、特殊なカーブが施されたレンズを装着することで、寝ている間に角膜を正常な状態に整える事で近視矯正を行い、日中は裸眼で過ごすことができます。もともとは夜間装用タイプのコンタクトレンズとして使用されていましたが、2004年に近視進行を抑える効果が報告されて以来近視抑制治療としても使用されています。
また焦点深度拡張型コンタクトレンズは通常のコンタクトレンズ同様に日中に使用するタイプのコンタクトレンズです。オルソケラトロジーと比較して使い捨てレンズなので衛生上の管理がしやすく、オルソケラトロジーで適応とならないような強い近視(-4D未満)の方にも使用できます。
しかしながらいずれも適切に使用を行わないと角膜障害や角膜感染のリスクが生じますので、親御様の管理が必要となります。
アトロピン点眼は以前より、眼科での瞳孔を広げる検査に用いられてきた目薬です。低濃度アトロピン点眼は、近視が進行しそうな学童期のお子様が適応となります。1日1回寝る前に点眼します。低濃度アトロピン療法はアトロピンを超低濃度(0.01%)にして点眼するため、瞳孔を広げる作用を回避しつつ、近視の進行スピードを抑えます。
まれに翌日に瞳孔が広がる方もいらっしゃいますが、点眼をやめれば元に戻ります。
お薬をやめることによるリバウンドが生じることも報告されているため、個人差はありますが成長期が終了するまで継続する必要があります。
保険外診療
*年4-5回程度の定期検査が必要になります。
低濃度アトロピン点眼薬について
本製品は、小児期の近視の進行を軽減させることを目的に低濃度のアトロピン(0.01%、0.025%)を配合させた点眼薬で、Singapore National Eye Centre(SNEC:シンガポール国立眼科センター)の研究に基づいて開発されています。※
低濃度アトロピン 0.01%点眼薬の特徴
近視の進行を抑制することが大切な理由
子どもの近視は、主に眼球が楕円形に伸びてしまう(眼軸長が伸びる)ことで、ピント位置がずれることにより生じるケースが多くあります。
近くを見ることが習慣化してしまうと近視になりやすく、一度眼軸長が伸びてしまうと戻ることがありません。
そのために眼軸長の伸びを抑えることが、近視の進行を抑制するためには重要となります。
低濃度アトロピン点眼薬が選ばれる理由とは?
低濃度アトロピン点眼は、近視の進行を遅らせる(眼軸長の伸展を抑制する)という点で統計的にも臨床的にも有意義な効果が確認されている治療法の一つです。
最適な濃度(0.01%、0.025%)のアトロピンを配合する事により、近視の進行スピードを効果的に抑えると同時に、アトロピン 1% 点眼薬よりも副作用を軽減しています。
◆ 重篤な副作用の報告はありません。※
*この薬の本来の作用により、一時的に瞳孔(黒目)が大きくなりまぶしく感じますが、数時間でほぼ正常な状態に戻りますのでご心配ありません。
◆ 近視の進行を平均約60%軽減させる良好な点眼薬と言われております。※
0.025%製剤は0.01%製剤と比べ、より優れた近視進行抑制効果を示すことが確認されていますが、0.01%製剤よりもまぶしさを感じやすくなる場合があります。
低濃度アトロピン 0.01%点眼薬は安全ですか?
シンガポール、および香港で行われた研究結果の安全性については以下の報告がありました。※
参考文献
※
1) Chua WH, Balakrishnan V, Chan YH, Tong L, Ling Y, Quah BL, Tan D. Atropine for the treatment of childhood myopia. . Ophthalmology 2006;113:2285–2291 © 2006 by the American Academy of Ophthalmology.
2) Chia A, Chua WH, Cheung YB, Wong WL, Lingham A, Fong A, Tan D. Atropine for the treatment of childhood myopia: safety and efficacy of 0.5%, 0.1 %, and 0.01 % doses (Atropine for the Treatment of Myopia
2). Ophthalmology 2012;119:347–354 © 2012 by the American Academy of Ophthalmology
3) Yam J, Jiang Y, Tang SM, Law A, Chan J, Wong E, Ko S, Young A, Tham C, Chen LJ, Pang CP, Low-Concentration Atropine for Myopia Progression (LAMP) Study,
A Randomized, Double-Blinded, Placebo-Controlled Trial of 0.05%, 0.025%, and 0.01% Atropine Eye Drops in Myopia Control. Ophthalmology 2018;-:1-12 © 2018 by the American Academy of Ophthalmology
4) Yam J, Li FF, Zhang X, Tang SM, Yip B, Kam KW, Ko S, Young A, Tham C, Chen LJ, Pang CP, Two-Year Clinical Trial of the Low-Concentration Atropine for Myopia Progression (LAMP) Study, Phase 2 Report Ophthalmology 2020;127:910-919 © 2019 by the American Academy of Ophthalmology